ブログ加藤眞三 新しい時代の医療のための患者学

アクセスカウンタ

zoom RSS 風邪かなっておもったら

<<   作成日時 : 2016/07/04 16:38   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

 「風邪をひいたので早く治るように薬を下さい」、
「この前の薬では風邪がまだ治らない」と
診療所を訪れる患者が後を絶たない。

患者は、「風邪を治すのは薬」だと考えている。

「風邪かなって思ったらすぐ○○○」「早めに○○を」
「くしゃみ三回、××三錠」。

幼少時からテレビのコマーシャルなどにより、風邪は薬で治すものという意識がすり込まれてきた。

しかし、風邪薬は、風邪による症状を抑さえ和らげる成分が配合されたものであり、風邪を治すのではなく、予防するのでもない。症状が軽いうちに、早い時期に飲めば早く治るというものでもない。

診療室などで処方されるのは、熱や咳、鼻水など風邪に伴う症状を抑えるための薬である。消炎鎮痛剤や抗ヒスタミン剤、咳止めなどの薬が配合される。このような薬による治療は、原因療法ではなく対症療法と呼ばれる。

対症療法である風邪薬は、本来身体が持つ感染防御作用を抑えてしまうため、かえって風邪を長引かせる可能性さえある。消炎鎮痛剤は、胃を痛めたり肝機能障害を来すこともある。

また、インフルエンザでは消炎鎮痛剤を服用すると、インフルエンザ脳症をきすことがあるなど悪影響もおよぼす。

風邪は薬では治らないし、むしろ長引かせたり副作用を伴うことが医学的には常識なのだ。




科学的根拠に基づいて作成された風邪の治療に関するガイドライン「急性上気道感染症治療法ガイドライン」(http://www.ebm.jp/disease/breath/01jokido/guide.html)では、風邪の初期の軽い症状なら医療機関を訪れなくて良いとしている。

市販の風邪薬に入れられている成分のほとんどは、「やっても良い」程度の評価である。発熱はウイルスを排除しようとする免疫力を高め、咳は肺にたまった痰を排出、気道の異物を出そうとするので、症状を抑えればよいということではない。

そして、抗生物質とよばれてきた抗菌薬は、細菌には有効だが、本来ウイルスによる感染症である風邪には効果はない。安易に抗菌薬を使用することは、抗菌薬が効かない耐性菌を増やすために、「やってはいけない」に分類される。

抗菌薬の投与は、高熱の持続(3日間以上)、膿性の痰・鼻汁 、扁桃腫大と膿栓・白苔の沈着 、中耳炎や副鼻腔炎の併発、強い炎症反応(白血球増多、CRP高値など)、リスクの高い(高齢者、免疫不全、悪性腫瘍、他の重篤な呼吸器疾患の合併など)細菌感染が合併する患者に限定するべきなのだ。

重い慢性病を持つ人は感染に弱いので注意が必要だが、健康な人なら、風邪は本来患者の持つ自然治癒力で治る。薬は症状を抑えるだけである。

風邪をひいて体が辛いが、どうしても仕事をしなければならない時に、あえて副作用も覚悟の上で飲むのが風邪薬であると思った方がよい。

しかし、患者に対して風邪薬はむしろ風邪を長引かせる可能性さえあることを説明すると驚かれてしまうのが現状だ。それは、風邪は薬で治すものという呪文にかかっているからである。



効くはずのない薬ダーゼンの承認取り消し

 ダーゼンという名の薬を聞いたことはないだろうか。ダーゼンは1968年に消炎酵素剤として承認され、長らく販売されていた。その後、武田製薬は、薬の有効性の再評価を厚労省から課せられたが有効性を示すことができず、2011年2月ダーゼンの承認取り消し手続きをとり、自主的回収した。

 この薬は風邪の際に処方される薬として大変人気があった。2009年度の国内販売実績は69億円である。高血圧に対する薬、降圧剤などは何千億円と販売されている中で、たった69億円かと思うかもしれないが、販売開始されてから40年以上経過していること、薬価が安価であることを考えれば、日本国内でいかに多くの人に飲まれてきたか想像に難くない。

 実は、この薬をわたしは処方したことがない。正確に言えば、どうしても欲しいと言う患者に数人に処方したことがあるかもしれないが、わたしの側からすすんで処方したことがない。

 その理由は、医学部生であった1977年頃、薬理学の教員が、「開業医など臨床医はこの薬をよく使うらしいが、この薬は効くはずがない」と教えてくれたからだ。

 ダーゼンは、蛋白質の消炎酵素製剤であり、口からのんでも蛋白質は胃や腸で分解されるだけで、そのままの形で吸収されることはない。従って、炎症のある局所に薬は酵素製剤として到達しないので効くはずがないという。

 それでは一体なぜ多くの医師はこの薬を処方していたのだろうか。

 風邪薬はいくつかの薬剤を混ぜて処方することが多く、どれが効いたのか効かないのがよく解らない。そもそも、風邪は自然に治るため、効果があるのかないのかが解らなくても、それですんでしまうのだ。

 ところが、風邪が治ると、患者はあの薬をもらったからよくなったと思い込み、医者もこれを出したので効いたのだろうと解釈してしまう。そんな経験が積み重なると、風邪にはダーゼンがよいとなってしまうのだ。

 風邪薬は風邪を長引かせるかもしれない。にもかかわらず、風邪をひいたらすぐに薬を求めてくるのは、このような情報が患者に伝わっていないためではないだろうか。
 伝わらない理由は、そんなことを伝えても儲かる人がいないからでもある。

 風邪は、ライノウイルス、 アデノウイルス、 パラインフルエンザウィルス 、RSウイルス、 コロナウイルス、 エンテロウイルスなどさまざまなウイルスによる感染によりくる症状の総称である。これらのウイルスに対する原因療法はまだ開発されていない。

 風邪をひいた時には、水分と栄養をしっかりとり、適度な湿度と温度の環境下で心身ともに休養させることが望ましい。多くの場合は3から4日の自然経過でよくなる。

自分の持つ免疫力・回復力をたかめることが何よりも大切だ。


拙著「患者の力」(春秋社)より

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
風邪かなっておもったら ブログ加藤眞三 新しい時代の医療のための患者学/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる