サルートジェネシス(健康生成論) と 解決志向アプローチ

大阪で開かれた肝臓病教室アドバイザリーカンファレンスでの講演で、タイトルにあげた二つの方法論について簡単に紹介した。両方とも原因を追究せずに、解決の方法をより具体的な行動として捉えようとするところに共通点がある。私は双方ともに、永田勝太郎先生の主宰する研究会 「こころと体の痛み研究会」で知った。

 サルートジェネシス(Salutogenesis;健康生成論)は、イスラエルの健康社会学者Aaron Antonovskyにより提唱された健康観である。

 現代医学で中心となるパソジェネシス(Pathogenesis;病因論)は、医師主導であり、病気の原因を追及し、それを取り除くことにより治療しようとし、病気と健康を異なるものとして分断する。それは、疾病中心主義であり、病気を取り除き絶対的な健康になることが目的になる。

 それに対して、サルートジェネシスは、患者中心であり、健康の部分を育てることにより解決を図ろうとする。健康、病気、死には一連の連続性があり、健康中心主義である。たとえ病気や障害があっても、人間として全体としての秩序がとれていれば 、その人は相対的健康であり、よしとする。残された資源を見つけ出し、それを活用しようとする。

 解決志向アプローチは、米国で活躍する韓国人インス-・キム・バ-グ により開発されたブリーフテラピーの一つである。
1)もし壊れていないのなら、直そうとするな、
2)上手くいっているなら、それをせよ、
3)上手くいっていないなら、他のことをせよを中心原理とする。

 原因を追究することをせず、解決に向けて具体的にできることは何かを優先して考えようとする。
今を肯定的にとらえ、問題を解決する資源(リソース)は本人の中にあることを前提とする。そして、その資源をいかに活用するかを考える。

 慢性病や生活習慣病が問題になるこれからの医療において、この両者は大切であろう。肝臓病教室の開設と運営に関心をもつ医療関係者のみなさんに推薦する図書である。

解決のための面接技法―ソリューション・フォーカスト・アプローチの手引き

健康生成論(サルートジェネシス)の理論と実際―心身医療,メンタルヘルス・ケアにおけるパラダイム転換

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この記事へのコメント

長友邦之
2005年02月28日 09:47
おはようございます。
この本は面白そうですね。壊れていないなら治そうとするな、というところが米国らしい展開と感じました。
水井我哉
2005年02月28日 10:13
アディクションの問題解決手法について、斉藤学先生の講演がありました。以下抜粋で記します。概念が似てそうでしたので。
医者が治せないで、無力で無知な筈の患者が勝手によくなるケースがあって「お医者さんのおかげです。」と言うけれども医者本人が自分が治したのではないと、知っている。そんなことがしょっちゅうおこるのが薬中、アル中,摂食障害です。それでどうも「あっちへ行ってみた方がいいのでは?」と言うことになり「AA(アルコホリックス・アノニマス)に行きなさい。」ということに。そのパートナーにはアラノンのような自助グループに。となる。
加藤眞三
2005年02月28日 10:15
コメントありがとうございます。本名で書かれているので、ご紹介しますが、「患者の生き方」にもでてくる農園、 皆農塾の塾長さんです。http://www5b.biglobe.ne.jp/~chyondow/kainow/ にも一度ご訪問してみてください。
水井我哉
2005年02月28日 10:17
今専門家達特に白衣を着た人達(別に攻撃ではないけど)その人達には全く見えない或いは見なくてすむようなもの、これらが非常に大切なものを含んで今して、この中には論理中心に組み立てられた医学を覆す要素もふくまれます。
加藤眞三
2005年02月28日 10:22
そうなのです。 自助グループは大変大事だと思っています。
今慶應大学病院では、アルコール性肝障害患者のための教室「断酒のための集い」を別に設けています。AAの方に来ていただきAAでの活動の様子を紹介してもらい、自助グループに参加する足がかりにしてもらえればと考えています。
病院でいきなり自助グループにといっても、ハードルが高くていけない人も多いですから。
肝臓病教室の中でも、グループワークを設けています。患者さん同士の情報交換が大切であると考えているからです。その後、全国のいくつかの病院でもグループワークを取り入れていただいています。
水井
2005年02月28日 10:22
思うに臨床家というのは何か自分の欲望があるのです。基本的には人に認証されたいということで、臨床中にも自己点検のようなものがあって、「これでいい?」というようなことです。だから臨床家とは自分の葛藤を患者さんに投影できる人のこと。ここからナラティブセラピーの話に入ります。
加藤眞三
2005年02月28日 10:24
人に認証されたいという欲望は決して悪いものではないと思います。しかし、その欲望のために、患者さんが犠牲になってしまうようだと問題ですが。
水井
2005年02月28日 10:29
ナラティブセラピーではセラピストはなんですか?というと、「いい質問をする」ということです。それが仕事です。いい質問とは患者さんが自分のことを理解するようなことをつまり質問の羅列の中でいつの間にか自分で自分の答えを知って「私はこうやってやっていければいいんです。さよなら。」といって帰っていくのがベストなんです。
水井
2005年02月28日 10:35
今セルフヘルプグループといわれているものと、治療現場の姿は一見似ています。しかしそこにはやはり違いがあって患者さんたちは自分に関心を持ち自分がそこへいくと心地がいい臨床家を選んでその前に座り続けると思います。
話の内容は以上のようなものでした。すみません。アクセスの仕方が悪く混線状態です。補足説明お願い致します。
加藤眞三
2005年02月28日 10:37
ほとんどチャット状態になっていますね。
ナラティブセラピーはやはり水井さんがいうように、傾聴することが一番大切なのだと思います。セラピストの心はかなり安定していないと、傾聴することは難しいのだと思います。よく鏡になることを目指すといわれますよね。
加藤眞三
2005年02月28日 10:52
3番目のコメント(加藤の一番目)は、長友さんに対するコメントです。
それ以下は水井さんに対するコメントですが、おそらく書いている途中に相手が書き込んでおり、話がちぐはぐになっていますが、文脈でご理解ください。
水井
2005年02月28日 13:08
加藤先生、ご助言ありがとうございました。
コメントには字数制限があるというので、切って投稿していました。
医療の維新をよりよくというメッセージに惹かれて見せていただいています。
ご紹介くださいました本、読んでみます。
加藤眞三
2005年02月28日 14:53
解決志向アプローチって、カウンセリングの手法ですが、実は自分自身に当てはめることができるようです。現状をそのままに認めて、その上で何ができるかを考える。
過去にとらわれすぎないで、「今に生きる」ことを気づかせるのが解決志向アプローチの究極の姿のようです。先ず自分で試してみてください。水井さん。

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  • 医療の改革を解決指向アプローチで

    Excerpt: サルトジェネシスと解決指向アプローチを、病気に対する新しい対処法として2月27日に書いた(http://katos.at.webry.info/200502/article_29.html)。しかし.. Weblog: ブログ加藤眞三 医療の維新をより良い方向に  @WebryBlog racked: 2005-03-18 19:52