医療者の間にも広がる不満

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患者さんの間にも医療に対する不満は大きいが、医療者の側にも不満は多い。

 勤務医の多くは、これだけ忙しくはたらいているのに給与は少ないし、患者さんからの要求は高まりで文句ばかり言われる、受験を勝ち抜いて医学部に入学し、一生懸命勉学して卒業したのに、それが報われていないと考えている。医療には100%の正解などありえないのに、裁判はそのような現実を知らず、非現実的な判例を残していく。

 患者の権利が高まること自体が悪いことではない。しかし、一方で、現実に苦悩する医療者の立場を無視した判決が続けば、そのうちに医療にたずさわるものはいなくなるかもしれない。患者と医療者を対立の構図でとらえようとすると、どこまで行っても平行線である。

 患者は医療の内実を、医療者は患者の持つ不安や不満を理解することにより、始めてよい医療の構築が可能となる。患者も医療者も双方の努力と歩み寄りが必要だ。


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「患者の生き方」より

すべての人がどこの医療機関においても、同じように医療を受けられるのが、日本の医療の特徴です。そして、日本の医療費は先進諸国のなかでは比較的低額ですんでいます。新聞社による調査では、予想外に日本の医療を評価している患者さんも多いのです。

 2002年4月13日の日経新聞には「医療再生」と題するテーマの患者アンケートの記事がのっています。「医療機関や医師に対する意識について」の設問では、満足が31.7パーセント、やや満足が48.9パーセントと、両者を合わせた満足派は8割を超える結果でした。不満足派の内容の分析では、待ち時間、医療費、情報公開度への不満がめだちます。
 医療の満足派が80パーセント以上と多かったことは新聞社にとっても意外(残念?)だったらしく、記事の最後は「満足度が総じて高いのは、診てもらっているとの意識が患者さんに強く、医療者と対等でないことの裏返しといえる。今後病気や医療に対する認識が深まれば変わってくる可能性がある。」などという本末転倒で意味不明のコメントにより締めくくられています。一体、何を目的に認識を深めようというのでしょうか。

 もっとも、この様な調査は調査の仕方により色々な数字が出されています。連合総合生活開発研究所が2004年4月におこなった「医療に関する勤労者の意識調査」では、かなり満足とやや満足をあわせた満足派は13.9パーセントであり、やや不満とかなり不満をあわせた不満は59.5パーセントです。不満足の原因としては、ここでも、待ち時間が長いが最も多く70.5パーセントであり、次いで医師などの経験や技能レベルがわからない(60.0パーセント)、病院や医師を選ぶための情報が少ない(52.0パーセント)、患者さんへの診断・治療内容の説明が不十分(43.1パーセント)であり、医療の選択に関する情報の提供への不満が大きいことが理解されます。

 新聞やマスコミでは、特にひどい内容であった医療の事件のみが、センセーショナルに取り上げられるため、日本全国の医療内容全体がそんなにひどいのかと思ってしまいますが、実際には良心的で献身的に働く勤務医も少なくありません。特に国公立病院や大学病院の勤務医の中には、劣悪な労働条件の中でも使命感を持って働いている人もいます。
 東京都医師会の勤務医委員会は、都内の勤務医を対象にアンケート調査が行い、「勤務医の現況-2003-」を報告しています。報告書の中から、自由意見として掲載されているものを、いくつか拾いあげます。

1.小児科の深夜の当直は現状ではほとんど通常勤務と同然の状態となっていて、睡眠時間はほぼゼロである。翌日はまともな診療ができないだけでなく、判断ミス等が多くなり危険。体力的にも過重負担でありこのままの状態が続くなら小児科はやめるしかないであろう。深夜の患者は患者教育がしっかりしていれば来院せずにすむものを、そんな患者ばかり来院が続くときには精神的にもやりきれないものがある。

2.大学病院に勤務しています。ご多聞にもれず、経営状態はよくありません。したがって、いくら勤務しても(平均12時間)時間外手当はありません。夜間緊急手術で呼ばれれば、車をもたない私は、タクシー代が赤字となります。手当てが出ないのは仕方ないとしても、赤字となります。当院では、緊急手術(夜間)はすべて、外科医のボランティアで行われています。
学生も敏感に感じ取るのか、外科入局が明らかに年々減少しています。このままでは、将来、深刻な外科医不足になります。外科医不足に気付いても、外科医養成には10年かかります。私は好きで選んだ道とあきらめていますが、今後の外科に非常な不安を感じています。

3.精神科の外来をやっていて一日に診られる限度は20人程度(学会などで知り合う欧米の医師も一日に10-20人しか診ないらしい)といわれている。しかし、先日、小生の外来には一日なんと115 人の患者が受診した。一般身体疾患を診る科であるならいざ知らず“こころ”の診療科で、こうなってしまうのは、何かが間違っているのではないだろうか?(ちなみにこの日は、夜中まで、外来をやっていました。)

4.週休一日、月給5万で、お昼ごはんも食べられないぐらい働くなんて、一般常識的におかしい気がする。
 6年間も勉強した後も、親の扶養の健康保険に入り、生活を援助してもらい、これでは社会人として自立がいつまでもできない。みんな社会に出て働き始めるときは会社だって何もできずに入社し、学んで生かせてもらうのに、なぜ、医者だけこんなに給料が安いのか?世間の目線で考えて欲しい。

5.心臓外科の講師をしていますが、手術にかかわる社会的責任が特に最近は非常に大きく、病院からの保障は何もなく、月給は卒後20年目で手取り36万円です。日本独特の、ハイリスク・ローリターンの労働環境で、対象が心臓病に苦しむ患者さんでなければ、とっくに辞めています。本当です。使命感とやりがいだけが支えですが、最近はこの医療自体にプライドが持ちにくく、とても若い有能な人が、よい研修を受けられるような次世代につながるような環境にありません。医療の将来は、恐ろしいものがあると思っています。

 この悲鳴にも似た勤務医の声が、今後どのように生かされるのかは、大きな問題です。それなりに努力をして、やっと医師になり、献身的に身を粉にして働いていても、報われない。この様な意識が勤務医の間に不満として渦まいています。

患者の生き方―よりよい医療と人生の「患者学」のすすめ

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  • 患者の権利ばかり高まっていいの?。

    Excerpt: 最近、裁判で医師が医療行為において訴えられ敗訴することが多くなっている。 もちろん、医療裁判は今までが少なすぎたのだし、何故死ななければいけなかったのか、納得のいく説明を医師がしないならば裁判に訴え.. Weblog: 女医繭奈のお気楽な医療日記 racked: 2005-03-08 14:41