米国の医療を見本にして良いのか

日本の医療は米国を手本に追っかけています。医学界のトップにいる人も米国で学んできた人です。米国への医療の留学や見学も後を絶ちません。しかし、それは一面の良い点だけを見てきたものです。私は、米国を追いかけることを危惧します。

「患者の生き方」より
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日本の医療はこれからどこへ向かうのか

 米国の医療をまるで理想の医療であるかのように考えて、日本に導入することを、そして米国の医療に追いつき追い越すことを、夢見ている人がいます。医療に限らず、米国のやり方が最も進み最も良いと考え、それに統一化することをグローバリゼーションという言葉で正当化する動きがあります。

しかし、果たして米国の医療は、世界で医療の手本となれる程、よい医療を実現しているといえるでしょうか。

米国の医療を国全体として見る時、私は決して成功した医療とはいえないと考えます。米国の医療は、膨大な費用がかかり財政的に破綻をきたしています。保険会社がつぶれたり、大きな病院が合併したりと大きく揺れ動いています。しかも、米国では20パーセントの人には保険がなく切り捨てられており、まともに医療を受けられない人がいる上での話しなのです。

 日本人が留学したり見学をして、学んでくる米国の一流施設での医療は、経済的に恵まれた人が受けることのできる、途方もなく高額な医療です。医師の数、看護師の数、コメディカルの数、設備、病院の空間、教育への時間のとり方、スタッフの数が日本とはまるで異なります。例えば、ハーバード大学には内科学の教授が93人、準教授232人、助教授が420人、講師が735人いるのに対して、東京大学では、教授が9人、助教授が6人、講師が18人、助手が83人、京都大学では、教授が8人、助教授が8人、講師が14人、助手が42人しかいないというのです。まさに、桁違いです。

 米国の超一流の医療施設では、これだけの人員と金を教育、臨床、研究にかけているのです。このことを無視して、日本に同じシステムを導入しようとしても、うまく行くはずはありません。

 米国では、金持ちが金を払うのであれば、よい医療を受けるのは当たり前であるという了解があります。市場経済や競争原理に任せれば、悪いものはやがて淘汰され、よいものが残るという信念が、医療においてもあります。弱肉強食の世界です。

 しかし、医療や福祉が市場原理を中心に進むことは、社会全体に大きな不幸をもたらします。なぜなら、医療は嗜好品とは異なり、生きることに直結する問題だからです。生きる権利を平等に分かち合う社会と、金持ちを優先する社会では、どちらの方が全体として幸福が実現される社会といえるでしょうか。私は、医療の分野への市場経済、競争原理の導入に反対します。

この記事へのコメント

2005年07月27日 17:51
能率第一主義で、病院という個別組織・医療システムという統合的社会構造を捉えていけば「命の値段」は条件次第で高低してしまう。ぞっとするほど怖いことだと思います。米国にも現況医療システムに疑問を抱いている医療者はいると思いたい。(ドラマERのファンです)
個人で医療保険に入ることが一般化してきた今日、いざ病気になった場合にも「自己判断による準備」の有無が問われるわけで。その自己判断が家計の状況に左右される以上は、すでに自己防衛を装った競争があるように思います。
しんぞうさんの仰るのは、もっと基本的な医療格差が生じることへの警鐘でしょうか。
グローバリゼーション=米国化の等式を、既に皆が気付いているのに突き進むのは、やはりどこか権力ある所に旨味もたらす数式なんでしょう。たぶん。
水井
2005年07月28日 01:13
「市場原理の下での医療やマネジドケア」が医療の今後のグローバルスタンダードだとする
向きが日本にありますが、お手本とされている米国の医療については、その光と影がよくいわれています。
そのなかで確かこのことは、むしろ米国の医療の影の部分だったはず。
光の方は医療のトランスペアレンシー(透明性)と、アカウンタビリティー(説明責任)。
なぜ、影の部分を提唱しているのでしょう。

水井
2005年07月28日 01:13
そもそも米国の医療改革は社会全体の医療不信から始まりました。「医療コストを抑制しつつも良質な医療の提供」をうたい文句に
支払い側(医療保険負担に不満の企業や雇用主)と、医療不信を抱く患者=消費者の双方に支持されましたが、その後の変遷と現状は望ましくないようです。
結局、個人の経済力が医療そのものへのアクセスをも左右することとなりました。
また米国のマネジドケアの仕組みについては、車両保険に類似し、コストに見合わないつまりは「廃車処分」的な発想が、医療においても現実味をおび、ホラーストーリーが生まれているといいます。
その上、企業の一方的な方向転換により約束されたサービスが停止されるということも、メディケアHMOの失敗が物語っているようです。
やはり・・こうした市場を担う方々以下、その利潤を得るものによる思惑なのでしょうか・。
しんぞう
2005年07月28日 05:07
医療の中の無駄を省き効率をあげること、サービスを良くすることは勿論必要なことですが、それは市場原理の導入がなくても出来ることであり、医療の原則に経済を最優先することに反対するのです。

原則が受益者負担では医療は根底から覆されます。
しんぞう
2005年07月28日 09:55
あと三日ほどで2万ヒットを数えそうです。2万を越えた時点で、くここのコメント欄にカウント数と時刻を一番早知らせてくださった方に「患者の生きき方」を進呈します。
2005年07月28日 09:57
え~、すでに「患者の生き方」を持っている場合はディナー付きのデート!!とか・・もちろん、男性コメンテーターの方ともですよ♪だめかしらん・・。
okan
2005年07月28日 10:12
ク~~~
もう少し早くお伝えいただければ…
書店に注文してしまいました。。。
雪ウサギ
2005年07月28日 23:28
きゃ~、今度こそ、私がいただきますわよ!!
今度はBARに眞三先生と水井さんのダブルエスコートっていうのではいけませんか?
一週間ぶりで顔を見せました。(見えていませんが、やはりこういう表現なのですかしら?)
雪ウサギです。発熱して寝込んでおりました。
家人に「鬼のかく乱だ!」と言われておりました。たった一週間なのですが、何だかお久しぶりという感じです。
皆さまお元気でしたか?
医学生(持ってます)
2005年07月29日 17:29
20055おめでとうございます。
医学生(さっきの)
2005年07月29日 17:32
私、先生の本持っています。
いつもお世話になってます。
眞三
2005年07月29日 17:50
突然数字が急激にアップして驚いていますが、確かに20000を超えているようです。医学生さんもし、そちらがよろしければmedlite@msn.com宛に送り先などを連絡してください。本をお送りします。医学生なら肝臓病生活指導テキストか肝臓病教室のすすめでもいいでしょうかね。
医学生(さっきの)
2005年07月29日 18:19
はい。ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
昼行灯
2005年07月29日 21:31
 しんぞう先生、カウント2万だいの大台、おめでとうございます!!
 今朝からおそらく100以上のカウントが急に増えたのではないかと、今見て驚いています。
 お若い読者がきっとふえてると当てにならない第六感で感じています。 
水井
2005年07月29日 22:41
しんぞうさん、今見ましたら、20095でした。いつの間に!すごいアクセス件数ですね。
ここでの議論の場が、加速して拡がってるように感じます。おめでとうございます。
雪ウサギ
2005年07月30日 06:03
眞三先生、「祝、超2万!」
おめでとうございます。
1万を超えてからそんなに日にちがたっていないはずなのですが・・・・。すごいですね。
3万を超すのもじきですね。
それだけたくさんの方々が見守っていてくださるということですものね。本当にうれしいことだと思います。
にのちか
2005年07月30日 20:28
雪ウサギさんがヒットしただろうと思ってきてみました
あっというまだったのでびっくりしました
雪ウサギさん今度3万ヒットですね
いやほんと。そう思います。
2005年08月03日 15:32
沖縄の精神科医より。
何でもかんでもアメリカだもんな。
困りますよね。あのEBMもどうにかならんですかね。
日本看護学校協議会共済会事務局
2005年08月07日 18:33
日本看護学校協議会共済会のホームページの管理人です。
この度、当協議会のホームページのリニューアルに際しまして、看護職・看護学生の方々のブログをいくつか掲載(リンク形式にて)させて頂きたいと考えております。つきましては、貴ブログについてご承諾を頂きたく、ご連絡させて頂いた次第です。何卒、ご許可のほどを、どうぞよろしくお願い申し上げます。
加藤眞三
2005年08月09日 15:17
日本看護学校協議会共済会事務局様。 リンクしていただくことは歓迎しますが、看護職でも看護学生でもないことをお断りしておきます。また、メリット(http://melit.jp/)も紹介していただきたいと存じます。そして、看護職からもメリットにどなたか参加して下さる事を期待いたします。
加藤
2005年08月09日 15:19
しばらくご無沙汰をしていました。さっきの医学生様には、お会いして本を差し上げることが出来ました。ランチつきです。次の3万回にも企画いたします。
加藤眞三
2005年08月09日 15:23
沖縄の精神科医さん。EBMが悪いのではなくて、EBM至上主義の医師がいけないのでしょうね。EBMの生みの親が同時にNBM(narative based medicine)も進めているなんて意外ですよね。 
医学生(さっきの)
2005年08月09日 15:37
しんぞう先生、本3冊も頂戴しましてありがとうございました。肝臓病テキストはとても解りやすく書かれていまして(イラストがまた、とても良くて)
これで、しっかり勉強いたします。
デザートつきのランチご馳走様でした。
若苗
2005年09月08日 22:29
ヒット数2万突破、お祝い申し上げます(遅かったかな)。若苗は患者の立場で感じていることを書かせて頂いております。過日、かかりつけ医と保健医療について話をしました。彼は尊敬する医師に、保健ではいい医療ができないと言われたとのこと。保健医療は公教育と同じで、ボトムアップには欠かせないのではと私。ところで、肝臓病教室に参加させて頂いて、気になったのが栄養の話。基準が米国のデータであるということ。なぜでしょうか? なぜ、肝臓の大きさも食習慣も違う日本に米国の基準を適用しなけばならないのでしょうか? 病院でご飯の量が多いのもそうかな?(女の子? にドンブリメシは・・・個人差は考慮しつつ)。ましてや本屋に行きますと、さまざまな食事療法の本が出ています。狂信は危険だと思いながらも、体を通して自分自身のアイデンティティを思ったりします。と、言いわけでもないのですが、私はどっちかと言うと縄文顔だから少しくらい塩分多くてもいいやと勝手な理屈をつけて、疲れたりストレスがたまった時に笹川流れの塩(マニアックやな)をなめたりしています(デスクワークでなんですけどね)。
若苗
2005年09月08日 22:39
くだらないコメントを書いた後、いつも見ている猫がらみ(犬でなくてすみません)のサイト(社会学者の)を見ましたら、ちょうど米国の医療・介護について書いてありました。いやはや偶然。もちろん否定的な面。けれど素人の私にも想像できるのが恐いです。
患者A
2005年09月25日 20:55
10年前、呼吸状態が悪くなり、動脈血が40mmHgになった時、インターネットで最初にコメントをくれたのはアメリカの医師でした。日本の医師は主治医に相談しろというばかりで何も意見をくれませんでした。アメリカの医療費は高いけれど、患者を救うという精神は日本よりすごいと思います。患者、医師、ボランテイア、が一体となって、会を組織し、同病患者、スタッフ(医師、ボランテイア)と、いつでもメール連絡ができるシステムは学ぶところがあるのではないかと思いました。良い点は取り入れていった方が良いと思いますが。
しんぞう
2005年09月29日 10:24
アメリカの医療にも良い点は一杯ありますし、学ぶべきところは多くあります。 私が問題にしているのは、アメリカの医療システムを無批判に導入しようとする今の風潮であり、それだけの経済負担を覚悟してのことであるのかを言っているのです。そして、金持ちだけを優先する医療を受け入れる覚悟があるのかの問いかけです。
すずめ
2005年10月31日 23:56
『医学教育』をざっと読んでみますと、アメリカ式の医療や医学教育を率先して行っている国立大学として筑波大学が非常に目につきますよね。筑波大学の教員の発言が非常に目につきます。しかも国家試験合格率が国立大学医学科で一番高いと新聞に載っていました。しかし、その筑波出身の、たいして私と年齢が変わらない女性の医師から国家試験対策の本を後に読みましたら「診断としてしてはいけないこと」をして、とんでもない誤診をつけられまして、病院を当然変えました。その時、筑波大学の医学系の本屋さんにあった医師国家試験対策の本を読み(ちょうど行く機会がありましたから)、断然病院を変えるべきと決断しました。現在は変えて正解でした。筑波の(これは医学科でも他の学類でも)変な国際コネクショニズム主義やアメリカ至上主義はどうか?と思います。
加藤眞三
2005年11月03日 18:05
筑波大学はもともと教育大学でしたから、筑波大学になった後も、教育に熱心です。臓器別に授業を行うなど医学教育の改革にも早くから取り組んできています。

都立広尾病院にも学生が研修に来ていましたが、よく教育されている印象を受けました。

一人の卒業した医師の印象から大学の教育を云々するのは危険だと思います。国家試験対策の本のどういう記載が変えるべきと決断させたのかはわかりませんが。

しかしながら、筑波大学も含めて日本の医療はアメリカ至上主義でやってきただろうことは確かですし、それは間違っているのではないかと私は考えています。

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  • 「米国の医療を見本にして良いのか」について

    Excerpt: 「米国の医療を見本にして良いのか」について 医者はどこへ向かう? Weblog: 善良な小市民 racked: 2005-07-27 12:13
  • 「米国の医療を見本にして良いのか」について

    Excerpt: 「米国の医療を見本にして良いのか」について 初めて拝見させて頂きました。 本日このブログに行き着きました。私なりの意見を書かせていただきたいと存じます。 私もアメリカ型医療には全て賛成してはおりま.. Weblog: 世界の医療と僕の幸せ racked: 2005-09-15 17:07