医療におけるエキスパート患者の役割  BMJ誌より

2019年8月14日発行の英国医師会雑誌にエキスパート患者であるパオラ・クルーガーさんの記事が掲載されています。日本の医療にとっても重要な記事と思われるため、日本訳をつけました。エキスパート患者の活躍が日本でも望まれます。どうぞ、お読み下さい。




パオラ・クルーガー:
医療チームにおけるエキスパート患者の役割
BMJopinion (英国医師会雑誌)  2019年8月14日

https://blogs.bmj.com/bmj/2019/08/14/paola-kruger-the-role-of-a-patient-expert-in-a-medical-team/?fbclid=IwAR0x_YApaQ8OE46seznirmWJFNd8HOPAm3pWw4y8v0kUrDZ6ayTRSUGZa8Y


パオラ・クルーガーは、彼女がどのようにエキスパート患者(熟練患者)になったかについて語り、彼女と同じ病状を抱える他の患者への支援を支援しています

患者擁護への旅は通常、病気の診断から始まります。私の場合は多発性硬化症でした。この後、病気を診断された患者は、それぞれ異なる方法で反応します。私にとって、突然目の前に開かれた新しい世界について、好奇心と、もっと知る必要を実感したことで、EUPATIコース(治療に関する欧州患者アカデミー)を受講することから始め、医薬品の研究開発における患者の関与の重要性に気付かされ、教育と訓練の道を歩みました。しかし、研究への関心を追求するとともに、ローマのサンカミッロ病院の多発性硬化症センターで働き、支援する機会をえました。

このことにより、ユニットに所属するエキスパート患者としての役割で、医師や看護師と並んで仕事をする機会が与えられました。医療スタッフは患者の専門家をチームの一員として持つことの利点を認めていましたが、この革新的な立場に関して境界を確立し、信頼を築くのは容易ではなく、時間がかかり、時には困難な役割をはたらいてきました。

まず、医療専門職の代わりになることが患者の専門家の仕事ではないことを明確にしましょう。私たちはそれぞれ独自の専門分野を持ち、お互いを補完します。私が勤務する臨床センターのエキスパート患者には、主に2つの役割があります。患者が治療を継続することを支援し、患者が病気に耐えられるように生活に関しての信頼できる情報を提供することです。ほとんどの患者が高く評価しているのは、同じ状態で生活している人と対面の対話を提供することです。(私の場合)確かな科学的背景を持つことの付加する価値は、患者が服用している薬が厳密なテストを経て副作用を最小限に抑えるように注意されていることを詳細に説明し、患者に安心させることができることです。多くの場合、患者は細かい点についてさらに聞くことにより安心する必要があります。なぜなら、患者にとってすべてが新しいものであり、医師の忙しいスケジュールでは、より多くの情報の要求や新しいルーチンを理解して取り入れるまでの時間に常に対応できるとは限らないためです。

私は、この病院の院長から正式に認められた最初のエキスパート患者であり、そのために、この道筋を確立することは特に困難です。すべてが新しいものであり、さまざまな意見や習慣について交渉する必要があります。しかし、私たちの目的は、病院の慢性疾患部門にこの概念を広め、彼らが私たちの例にならうようになることです。訓練された患者と医療専門家が一緒に協力することには大きな価値があります。これまでのところ、特定のトレーニングを受けた一つの専門家として病院の活動に公式に関与したエキスパート患者は他にいません。患者組織は、より伝統的な役割で一般的な情報とサポートを提供しています。

労働時間は週ごとに異なり、すべて自発的な仕事ですが、それは素晴らしい学習経験であり、何よりも、私は患者に新しい機会を与えていることを感じられ、非常にやる気を感じています。私は、何かを変えたいのなら、自分で最初に良い例を創らなければ挙げならないといつも信じてきました。

医師の仕事に近すぎると思われることと、干渉の可能性のあるヒントを与えることを避けるために、患者と医師の意思決定の過程において患者をサポートすることはしません。しかし、自分自身のケアに対して責任を負うことがいかに重要か、すべてを医師の手に委ねないでくださいと患者に説明しようと試みます。彼らが治療の副作用に対処することを恐れている場合でも、彼らが私に尋ねる場合にのみ、私は彼らを安心させるように説明をします。私は、積極的に患者を探して助けを提供するのではなく、患者が私に話したいと思うときに手助けすることを原則にしています。患者は自分の時間をもって調整する必要があります。医師や看護師にとっては、厳密に医学的ではない質問に答えるのに費やされる時間が減り、新しい生活様式に適応する患者がより多くなります。

臨床センターのエキスパート患者は、研究活動を支援することもできます:例えば、患者を治験募集の機会に利用できるようにすることで、患者に臨床試験への参加に対する不安を話し合う機会を与えます(仲間の患者との交流が容易です)。インフォームドコンセントの複雑さと重要性を理解し、患者に優しい用語で試験のさまざまな段階を説明し、長期フォローアップへのコミットメントなど、試験参加者に課せられる要件を説明します。ほとんどの患者は、臨床試験への個々の参加者の統計的価値について知らされておらず、多くの患者は、他の誰かが彼らを置き換えることができるものと(間違って)考えることがなくなります。

私の役割で私が本当に気に入っているのは、私の助けが他の患者をいかに支援し、病気への対処により耐えられるかを見ることができることです。患者にとって非常に否定的な瞬間に、私のサポートがどのように重要であったかを彼らから聞くことができたとき、私のすべての努力が価値あるものであったと感じられます。私と一緒に働く医師から、患者が非常に要求が高くなってしまうことを警告されることがありますが、私は彼らの旅の一部を患者に同行しているだけであり、その後、彼らは順応し、自信を取り戻し、私の助けなしで続けられることを彼に伝えています。

私が医師と直面する困難の1つは、病気についてすべてを知っていても、それは病気と一緒に暮らすことがどんなものかを知っているという意味ではないことを理解してもらうことです。医師の役割は最重要で不可欠ですが、病気と一緒に暮らすことはその専門知識としての一部ではないため、この問題について患者にアドバイスするために最適な人ではありません。だからこそ、チームの患者エキスパートが必要なのであり、エキスパート患者が患者により良いサービスを提供します。

私は医療チームで働くための特別な訓練を受けていません。EUプロジェクトで臨床センターをサポートし始めた後、私の関与は徐々に強化されました。協力して働くことで、私は信頼をもつことができ、さまざまな観点を理解するが可能となりました。長いが、着実な旅でした。時として私を苦労させたのは、医師がエキスパート患者を他の医療専門家のように見ることになり、私たちが異なる言語を使用し、異なる習慣や期待を持っていることを理解してもらうことが難しいという事実です。私たちは、誰もが快適に感じることができる共通言語を開発し、チームのすべてのメンバーのすべてのスキルが評価される新しいチームの精神を作成する必要があります。

臨床センター(病院)にエキスパート患者がいることはまだ一般的ではありませんが、将来的にはそうなることを願っています。スペシャリストが不足しているイタリアでは、チームに患者のエキスパートがいることは本当に助けになり、すべての人にとって個人的成長のための強力な要素を提供することができます。

パオラクルーガーは2010年に慢性疾患と診断されて以来、患者の擁護に関与しており、ローマの大病院のMSセンターと協力して、患者中心の医療モデルを開発しています。彼女は2016年にIMIが資金提供したプロジェクトEUPATIプロジェクトを卒業しました。2019年4月に、彼女は病院長からMSセンターのエキスパート患者に任命されました。彼女はEMA認定のエキスパートであり、数多くの国内および国際的なイベントで講演しています。彼女はISPOR患者円卓会議のメンバーであり、複数の委員会と科学委員会の患者を代表しています。










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