日本の医療を変えなければ。

画像
 明治以来続いてきた権威主義と科学至上主義の医療から何とか脱出しなければ。
新しいうねりが医療の世界に押し寄せています。患者さんからの要求によりおきた波であり、医師側の意識改革は残念ながらそれに追いついていません。それでも、日本の医療は間違いなく戦後最大の改革期を迎えています。いや、明治以来の最大の変革期といってもよいでしょう。私はこれを「医療の維新」と呼びたいと思います。

 明治維新は日本の近代史の中でも最も魅力的な人物を生んだ時期です。その中でも一際明るい光を放っていたのが、福澤諭吉であり、坂本龍馬です。
慶応3年11月15日、坂本龍馬と中岡慎太郎は京都近江屋で暗殺されました。その時、部屋にあった掛軸には二人の飛び散った血痕がつきました。現在、京都国立博物館に、血染めの掛け軸「梅椿図」として納められているものです。

 龍馬が暗殺される直前に誕生日のお祝にと、自筆の「梅椿図」を持参したのが板倉槐堂(いたくらかいどう)です。槐堂は幕末の勤王志士を支援していました。龍馬をはじめとした志士達は京都に上京するたびに、槐堂の下に集まっていたのだそうです。
槐堂が、私の曽祖父江馬天江の実兄であることを、そして勤王志士の後援者であったことを知ったのは、昨夏、本書の準備がきっかけでした。それを知り、私も槐堂にならい、医療の維新をめざす若い医師(志士)の集う場を提供する医師になりたいものだと感じました。

 医療訴訟の増加、インフォームドコンセントを重視した判決、医学教育制度の改革、研修医制度の改革、それに伴って迎えようとしている医局制度の終焉、医療保険制度の改革(出来高払い制から包括評価払い制度へ)、国立大学や国立病院の独立行政法人化など、様々な所から医療は大きく変わろうとしています。

 この大きな変革の時代に、よりよい医療を受けるためには患者さんの側にも知識や工夫が必要です。明治維新の改革では、その時代を背景に日本は自国の繁栄をめざして列強にならび軍国主義・権威主義への道を歩んでしまいました。しかし、これからの医療の変革を、誤った方向にむかわせないためにも、患者さんや社会からの目による医療者への働きかけが不可欠です。また、医療に市場原理を導入しようとする動きがありますが、李啓充氏が再三警鐘を鳴らしているように、保険と自費の医療の混合医療や株式会社の参入を認めたりすることは、アメリカの現実をみても悲惨な結果をもたらすことは明らかです。公平性の原理を維持するためにも、このような動きを許してはなりません。

 本書の表題「患者学のすすめ」は、医療者向けに「肝臓病教室のすすめ」を書いた時から、次に一般向けに書くならと考えていたものです。患者さんにとっての医療の案内書であると同時に、患者さんに医療の維新に参加してもらいたいという嘆願の書でもあります。ここでの患者学は、医療を受ける際に患者さんに必要な知識であり、医療をよくするための方策としての患者学です。

 この本の執筆中に、大学の医学部教育統括センター長の天野隆弘先生より、患者中心の医療をテーマに選択科目として授業をやってみないかと提案されました。私はそれを喜んで受け、授業に「患者学、医療はどこまで患者中心になれるのか」とのタイトルを付けました。こちらの患者学は、医師にとっての患者学です。授業では、患者さんから学ぶこと、そして患者さんを中心とした医療を進めるための考え方を討議し身に付けたいと考えています。

 患者にとっての患者学と医師にとっての患者学がうまくかみ合うことにより、医療がよりよい方向に進めばと願っています。

患者の生き方 あとがき より
患者の生き方―よりよい医療と人生の「患者学」のすすめ

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ひかわ
2005年03月22日 10:57
相変わらず、環境と闘う氷川ですが(biglobeさんにはマックにも対応して頂きたいモノです)
肝臓病教室のすすめを読みました。感動しました。多くを学びました!!
僕は大学を出てから先生と呼ばれるのも呼ぶのも嫌っていましたが
加藤さんはそう呼びたい衝動に駆られています。
邦之
2005年03月22日 20:47
みちとせを忍び来まして君たちぬ道ひらけゆくこの暁に
志半ばに逝きし龍馬ならで大和乙女ら君育てます
君立たばあめのむら星成りい出てしるべとなりて地を照らすかな
2005年03月22日 23:21
コメントありがとうございます。
医療の改革に向かってよい知恵を出し合い、協力しましょう。
庭の桂に新しい葉が出てきました。春の訪れを感じさせます。
2005年03月25日 00:17
こんばんは。
加藤様からの発信を、おぼつかないキャッチながら受け止めたいと
願うひとりです。
亡き父、癌と静かに戦っている義父、二人の母も合わせていくつの
病院通いをしているか・・。良い生き方、納得いく死の受け入れを
実現するには、患者とその家族が医療行為の傍観者であってはならない
と実感しております。「診てもらう、治してもらう」という受動姿勢から
プロの力を得て「共に病気と戦う」の能動姿勢へ。
ブログ移動後も、拝読したく思います。どうぞよろしくお願いします。
2005年03月29日 21:26
ブログの移行をまだためらっています。
新しいコメントやTBが、オーナーにはメールで届くのですが、他の人はそれを見つけるのが大変だろうなと思っています。
後は、ここのブログはマックで相性が悪いらしいのです。
エキブロは良い雰囲気なのですが、著作権の問題がありそうでためらっています。社長さんは返事してくれないし。
移行が決まったら、また記事としてお知らせします。
ash
2005年05月12日 23:17
こんばんは。
日本の医療を変えるには、なかなか問題が山積みですね。
いろいろなブログで検討されていますが、ここのブログがお薦めですよ。
http://blog.melma.com/00096386/
かなり、勉強になります。
皆さんもぜひ、ごらんください。

この記事へのトラックバック