サルでも写真が撮れる近未来の医師に託された仕事

 前稿は、サルでもとれるカメラの使用を、私は避けたいという懐古趣味なものでしたが、本稿では、逆に、サルでもカメラで写真を撮れる時代に、医師に託される仕事はどうなるかという近未来の医師像について考察します。

 医療に要求されるものとして、知識、技術、態度(コミュニケーション)の三要素があげられますが、現在の医療や医学教育は、知識と技術に偏りすぎていると指摘されています。現代社会はコンピューターの進歩により大きく変わろうとしていますが、コンピューターが得意とするのは、何よりも知識の集積と解析、そして精密な動きを再現する技術です。

 コンピューターは膨大な知識を処理し、機械技術が進歩したことにより、素人がやっても名人と同じような結果を出すことができます。

 コンピューター診断が進むと、熟練した医師がいなくても、診察室の机上のコンピューターにより診察が進みます。症状や採血の検査結果からは確率的に鑑別診断があげられ、更に診断を確定するための検査の組み合わせ、結果の解釈や診断の過程が画面に映し出されます。また、コンピューターによる画像解析により、腫瘍の有無や腫瘍がどのようなものであるかが確率的に報告され、放射線専門医や受け持ち医によるフィルムの読影は必要なくなります。
 一昔前には、尿検査も、医師が試験管に入れた試薬で尿の色が変わるのを見て判断していましたが、今やそのようなことをする医師はいません。せいぜい当直の時、テストペーパーでみる程度です。血液の検査結果も、レポートの数字や文字を見るだけで判断し、自分で試験管をふって測定する医者などいません。つまり、古い医者はフィルムをみない内科医がなどと言ってけなしますが、そんなことは懐古趣味であり、近未来では当たり前のことなのです。

 治療に関してもしかりです。名手でなくても、複雑な手術を、より簡単な方法や機器をつかって、誰でもできるようにするのが科学技術の目指すところです。難しい部位や細かい手術は、ロボットを使った技術で確実に処理されます。つまり、コンピューターを利用した診断や治療の進歩により、医療の中において、医師個人の知識や技術は大きな比重を占めなくなるのです。

 それでは、そのような時代に医師に託される仕事は何でしょうか。医師はコンピューターと患者の間で、情報の受け渡し役を担うことになるのでしょう。患者が、何を訴え、どのような病歴や生活歴をもち、何を問題に感じているかを聞き出し、それをコンピューターに入力するのです。そして、コンピューターにより下された診断や治療方針を、患者に伝えます。そうなれば、医師の主たる仕事は、患者とのコミュニケーションということになります

 このように考えると、現在のフィルムを見ない医師や鑑別診断を考えない医師を一概に非難することはできません。フィルムを見ること、鑑別診断を考えることは、近未来の医師には不要なものとなるからです。彼らにとって、そのような未来はお見通しなのかもしれません。

 しかし、もしそうであるのならば、彼らは患者とのコミュニケーションの達人になることを目指して努力しているはずなのですが、・・・・・・・・・・・。


「肝臓病教室のすすめ」より

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この記事へのコメント

GORO
2005年05月24日 18:57
私は飛行機が好きなもので、航空業界の事情も
ちょっとかじっております。

最近の旅客機も医療の世界と同じで、
急速にコンピューター化が進んでいます。
普通の定期便でも、パイロットが直接操縦して
いるのは、地上走行~離陸後数十秒のあいだ、
また、着陸の数分間の、ごく限られた時間帯
だけで、あとはほとんど全ての操縦を
コンピューターが行なっています。
たまにパイロットが操縦していると、
乗り心地がすごく悪くなるので
すぐに分かります。^^;

では、普段のパイロットはコックピットで
何をしているのかというと、コンピューターが
指示通りに動いているかのチェックが大半です。
昔のようにパイロットの技量が問われる場面は
確実に少なくなっています。

パイロットが居眠りしている間に
飛行機が到着して乗客が皆降りてしまい、
CAさんに起こされて目が覚めた、という
笑えないジョークもあるほどです。
GORO
2005年05月24日 18:57
しかし、皮肉なことに、パイロットの負担を
軽減させ、安全性を高めるために導入された
コンピュータが原因となって大惨事を招いた
事故もたくさんあります。
平成6年に名古屋空港で起きた中華航空機の
墜落事故は、まさにその典型例でした。
パイロットが、コンピュータの使い方を
誤って認識していたのです。

かつて、旅客機の運航には、
5人のクルーが必要でした。
機長、副操縦士、航空機関士、航法士、
無線技師の5名です。
それが、コンピュータの発達に伴って
1人また1人と減っていき、最近の機種では
2人での運行が常識になっています。
でも、今後どんなにシステムが発展しても、
絶対にワンマン運行にはならないと言われて
います。万が一コンピュータがアウトになった
とき、最後の頼りとなるのはやはり人間だから
です。

医療の世界でも、医師と顔を合わせることなく
全自動で診察が終了、
なんてことにならないと良いんですがね...。
megu
2005年05月25日 12:38
こんにちは!
コミュニケーションがとても大切というのは私もすごくよく解るのですが、具体的にどうしたらいいか悩みます。遠慮してもダメだろうし、ズバズバいくのも相手に嫌われそうです。
私は、医学部生よりももっと偉いお医者さんや一般に知的な職業についている方達(センセイや社長さん)の方が、自分より目下の人や年寄りといった社会的弱者に対して興味さえないみたいなのが、気になるし嫌です。GOROさんの心配とは別の意味で、気配り上手なロボット医師の方が、いいってなことも思います。
2005年05月25日 12:44
GOROさん。まじめなGOROさんは博学ですね。面白い話をありがとうございました。

Meguさん。これは強烈なパンチでね。実際、コミュニケーションが大切だなどとは、医学教育の分野では言われているのですが、それを教える臨床家が大学にはいないという問題があるのです。
omori-sh
2005年05月25日 14:51
不要になった技術に固執し、コミュニケーションをおろそかにしたまま変われない近未来の老医師は?なんて思う自分も明日は我が身…
ほんと、meguさんのパンチ、一般人はみんな思っていて、気づいてないのはわたくし含め「センセイ」なのかも…(しんぞう先生除く)
GORO
2005年05月25日 17:59
>meguさん
>私は、医学部生よりももっと偉いお医者さんや
(中略)
>社会的弱者に対して興味さえないみたいなのが、
>気になるし嫌です。

これ、全く同感です。
私も日本の権威と言われる、ある偉いお医者さん
の診察を受けたことがありました。
ところが、その医師の態度ときたら横柄そのもの。初対面の患者である私をいきなり「おまえ」
呼ばわりするのです。
さらに、私にうつ病の履歴があると知るや、
「おまえ、うつ病だったのか。
ばーか言うんじゃないよ。
それだったら忙しいオレの方がとっくに
うつになってるぞ。そう思わないか?え?」
と言ってきたのです。これって信じられますか?
コミュニケーションの基本中の基本である
言葉遣いからして全くなってないこの医師は、
一体どういう人生を歩んできたのかと
ある意味非常に興味をそそられました。
いくら腕が確かだとはいえ、
人間的にちょっと問題ありかなと思いました。
少なくともしんぞう先生は、
そんな方ではありませんよね??
ポー助
2005年05月25日 20:13
横スレすいません。
既にもう呑みながらカキコしているポー助です。

>気配り上手なロボット医師の方が、いいってなことも思います。

meguさん
確かにこれは言えますね。
何かあの映画のロビンを思い出してしまいました。
人間らしからぬ医者に限らず人達がいかに多いか?
医療業界に限らず、人と接するのが極端に常識から欠如している方々がいかに多いか?
こんな事を思うと親爺の説教みたく成るのかなあ~

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